大問1
次のⅠ,Ⅱ,Ⅲの資料は,生徒が日本の都市の歴史についてレポートを作成するために用意したものの一部である。あとの(1)から(3)までの問いに答えなさい。
資料は割愛
1(1)
次の文章は,Ⅰの資料について説明したものである。文章中の(①),(②)にあてはまる国名や寺院名として最も適当なものを下のアからキまでの中からそれぞれ選びなさい。
Ⅰの資料は,奈良時代の都の略地図である。この都には,当時シルクロードで結びついていた(①)といった国々の物品が集まった。こうした物品の一部は(②)に納められ,現代に伝えられている。 |
解説
まずは(①)に当てはまるものについて。
文章中の奈良時代は710年~794年まで。シルクロードは,紀元前2世紀から15世紀にかけて栄えた交易路(貿易などのために物を運ぶ道や水路)のこと。
選択肢のイスラム帝国は西暦632~1258年,モンゴル帝国は1206~1635年。
この時点で時代が合わないモンゴル帝国は消えて,選択肢はアかイのどちらかになる。
漢は,前漢・後漢を合わせて紀元前206~西暦220年。唐は,618~907年。文章中の奈良時代であることを考えると唐になるから,答えはイ。
次に(②)に当てはまるものについて
1(2)
Ⅱの資料は幕府がおかれていた,ある都市を復元した模型の写真である。この都市に幕府がおかれていた期間のようすについて述べた文として最も適当なものを,次のアからエまでの中から選びなさい。
ア 城を中心に武士や町人の居住地が配置され,100万人以上の人が住んでいた。
イ 有力な商工業者たちによる自治が行われ,南蛮貿易などの交易で栄えていた
ウ 日蓮宗の開祖となった人物が布教活動を行い,信者を増やしていた。
エ 真言宗の開祖となった人物が寺院を与えられ,貴族の信仰を集めていた。
解説
ア 城下町に100万人以上住んでいることから江戸のこと。つまり江戸時代で×。
イ 南蛮貿易と有力な商工業者の自治とあるので安土桃山時代の堺のことをだから×。
よって答えはウ。
1(3)
次の文章は,Ⅲの資料について説明したものである。文章中の(③)(④)にあてはまる国名の組み合わせとして最も適当なものを,下のアからエまでの中から選びなさい。なお,文章中の2か所の(③)には同じ国名があてはまる。
Ⅲの資料は,江戸時代,(③)商船で来航した商人との交易が行われていた人工の島を描いたものである。(③)はアジアとの交易で繁栄したが,19世紀になると,18世紀末の革命に際して人権宣言を発表した(④)の支配を受ける時期もあった。 |
ア③中国 ④フランス イ③中国 ④アメリカ
ウ③オランダ ④フランス エ③オランダ ④アメリカ
解説
資料Ⅲは出島で,中国,オランダと貿易を行っていた。したがってどちらも当てはまりそうだから,④のほうから考える。
「18世紀末の革命に際して人権宣言を発表した」とあるので1789年のフランス革命とフランス人権宣言が合うから,④にはフランスが入る。
③は④のフランスから支配を受ける時期もあったとあるので,フランス革命以降ナポレオンがロシアとイギリスなど以外のほとんどのヨーロッパを支配したことから中国ではなくオランダとなる。よって③オランダ④フランスで答えはウ。
大問2
次のⅠからⅤまでの資料は,生徒が日本における新聞の歴史について探究活動を行った際の記録の一部である。あとの(1)から(4)までの問いに答えなさい。
Ⅰ
○グラフ中A,B,Cのそれぞれの年のできごとA 大日本帝国憲法の発布B 三国干渉C 日露戦争の開戦(P新聞の社史をもとに作成) |
|
上のグラフ中のAからCまでの期間は,日本では〔 ① 〕があった。なかでもAからBまでの期間には議会政治が始まり,P新聞の発行部数は(②)している。先生からは「他の新聞の発行部数も調べるとよい」とのアドバイスを受けた。 |
Ⅱ
○グラフ中D,Eのそれぞれの年のできごとD 五・四運動E 日本が国際連盟を脱退(P新聞,Q新聞の社史をもとに作成) |
|
日本は五・四違動では(③)の人々の反発を受け,関東軍による(④)では国際連盟による調査を受けた。また,上のグラフの中のDからEまでの期間には,〔 ⑤ 〕。この期間にはQ新聞が関東大震災の翌年に発行部数を大きく伸ばしたが,両新聞の発行部数は前年を下回る年もあった。 |
Ⅲ
敗戦前の新聞の見出しは,右の記事のように,右から読むことに気づいた。そこで「敗戦前の見出しを右から読むことに統一していたが,敗戦以降は,左側から読むことに統一したのはなぜか」という仮説を立てた。 |
略 |
Ⅳ 朝鮮戦争についての新聞記事 V 男子の普通選挙と同時期の新聞記事
2(1)
Iの資料中の〔 ① 〕,(②)にあてはまる文やことばとして最も適当なものを,次のアからカまでの中からそれぞれ選びなさい。
ア 近代化が急がれた時期にあたる。その背景の一つには欧米の帝国主義の動き
イ 中央集権化が進められた時期にあたる。その背景のーつには中国で成立した統一国家の影響
ウ 国民の間に「中流意識」が広がった時期にあたる。その背景の一つには家電の普及
エ 毎年増加 オ 毎年減少 カ 年によって増減
解説
①について
A大日本帝国憲法の発布は1889年,B三国干渉1895年,C日露戦争の開戦1904年だから,A~Cは1889~1904年の間(明治中後期)。
アは,明治の中期以降の話だから〇
イは,明治維新だから明治の初期だから×。
ウは,中流意識が高まるのは高度経済成長だから昭和の中期
答えはア。
②について
グラフは,前年比のグラフである。100%を超えていれば前年より増加を,100%を下回れば減少していることを表している。文章中はAからBとなっているがその期間すべて100%を超えているので,答えはエの毎年増加となる。
2(2)
Ⅱの資料中の(③)(④)〔 ⑤ 〕にあてはまる国名やことば,文として最も適当なものを次のアからケまでの中からそれぞれ選びなさい。
ア 朝鮮 イ 中国 ウ イギリスやアメリカ
キ 不況が深刻どなる中,金融恐慌が発生し,銀行が休業するなどした
ク 戦争が長期化する中,中学生も勤労動員の対象となった
ケ 物資が不足する中,海外からの引きあげ者もあり,物価が急激に上昇した
解説
③について
五・四運動(1919年)は中国の北京で起きたので,答えはイ。
④について
国際連盟が調査したのは満州事変の柳条湖事件(1931年)だから,答えはオ。
ちなみに,柳条湖事件は日本の軍隊が南満州鉄道を爆破して,中国のせいにした事件。
⑤について
グラフはDの五・四運動(1919年)~Eの国際連盟の脱退(1933年)の期間について。
キ 金融恐慌は1927年で〇。
ク 勤労動員(1943年)は第二次世界大戦中(1941~1945年)だから×
ケ 物資不足,海外からの引きあげ者から1945年以降の第二次世界大戦に負けたあとだから×
答えは③イ④オ⑤キ。
2(3)
次の文章は,生徒がⅢの資料中の下線部の仮説をⅣの新聞記事を用いて確かめた際に作成したメモの一部である。文章中の(⑥),(⑦)にあてにまることばの組み合わせとして最も適当なものを下のアからカまでの中から選びなさい。
Ⅳの新聞記事にある戦争は(⑥)の対立を背景にして始まった。見出しを読む方向から考えて,仮説が正しいとすれば,この記事が新聞に掲載されたのは(⑦)であり,仮説は正しくないことが分かった。 |
ア⑥社会(共産)主義陣営と資本主義陣営
⑦敗戦前となるが,実際には敗戦以降
イ⑥社会(共産)主義陣営と資本主義陣営
⑦敗戦以降となるが,実際には敗戦前
ウ⑥朝鱗半島を巡る日本とロシア
⑦敗戦前となるが,実際には敗戦以降
エ⑥朝鮮半島を巡る日本とロシア
⑦敗戦以降となるが,実際には敗戦前
オ⑥この地域における宗教間
⑦敗戦前となるが,実際には敗戦以降
カ⑥この地域における宗教間
⑦敗戦以降となるが,実際には敗戦前
解説
⑥について
朝鮮戦争は,資本主義のアメリカと社会(共産)主義のソ連や中国の対立によって起きたので,アかイ。
⑦について
仮説通りならば敗戦前になるはずだが,朝鮮戦争は1950年だから敗戦(1945年)の後で答えはア。
2(4)
次の文章は生徒がⅢの資料中の下線部の仮説を確かめる際にみつけたVの新聞記事について述べたものの一部である。文章中の(⑧)(⑨)にあてはまることぱの組み合わせとして最も適当なものを下のアからエまでの中から選びなさい。
「陪審法」は,現在の裁判員制度と同様に国民が(⑧)することを目的としてつくられた。この法律が実際に実施された年代から,Ⅴの新聞記事は仮説を否定するものであることがわかる。この法律が実施された年代には,選挙権は一定の年齢に達した(⑨)に与えられており,この法律でも陪審制(現在の裁判員)をつとめるものの資格の一つとして,同じような規定があった。 |
ア⑧裁判を傍聴 ⑨国民のうち男性のみ
イ⑧裁判を傍聴 ⑨すべての国民
ウ⑧司法に参加 ⑨国民のうち男性のみ
エ⑧司法に参加 ⑨すべての国民
解説
⑧について
日本の裁判員制度は,有権者が裁判に参加する制度だから,答えは,ウかエ。
⑨Ⅴの新聞記事は1925年の普通選挙法で,選挙権は満25歳以上のすべての男子だから,答えはウ。
大問3
次のⅠからⅣまでの資料は,生徒が各都道府県の今後の課題などについてグループで学習した際に用いたものの一部である。あとの(1)から(3)までの問いに答えなさい。
なお,Ⅱの資料中のAからDまでは,秋田県,神奈川県,千葉県,鳥取県のいずれかであり,P,Qは人口に占める65歳以上の割合,有業者に占める第三次産業の割合のいずれかである。
Ⅱ4県の人口
県名 | P(%) | Q(%) | 人口(十万人) | 米の産出額(億円) | 海面養殖業収穫量(t) |
A | 37.2 | 66.6 | 9.6 | 1126 | 166 |
B | 32.1 | 69.3 | 5.5 | 151 | 1335 |
C | 27.9 | 77.6 | 62.8 | 689 | 5702 |
D | 25.3 | 78.1 | 92.4 | 33 | 946 |
全国 | 28.4 | 72.5 | (「データで見る県勢2022年版」をもとに作成) |
Ⅲ鳥取県の取り組みの一部
SDGsのゴールアイコン | SDGsのゴール達成のための向上を目指す指標 |
Z | 製造品出荷額等 就職者決定数有給休暇取得等 観光入込客数 |
(注)「観光入込客数」は日常生活圏以外の場所へ旅行し,そこでの滞在が報酬を得ることを目的としない者の人数を示している。(「鳥取県令和新時代創生戦略」をもとに作成〕
3(1)
次の文章は,Ⅰ,Ⅱの資料について述べたものである。文章中の〔 ① 〕,(②)にあてはまる文やことばとして最も適当なものを,下のアからエに中からそれぞれ選びなさい。
Ⅰの資料では,全都道府県の2020年現在の人口と、市町村の減少割合を「・」で示している。X(丸で囲んだ範囲)に含まれる都道府県では,Y(四角で囲んだ範囲)に含まれる都道府県に比べて,市町村合併の進んだ2000年代までに〔 ① 〕と考えられる。また,Ⅱの資料は,Iの資料中のX,Yのそれぞれから2県ずつ選び,その4県について,人口等を比較したものである。Ⅱの資料中のPは(②)を示している。 |
ア 人口が増加し,税収が伸びた市町村が多く, 市町村合併の必要性が低かった
イ 人口が減少し,財政状況の悪化する市町村が多く,市町村合併の必要性が高かった
ウ 人口に占める65歳以上の割合
エ 有業者に占める第三次産業の割合
解説
①について
Xは市町村の減少割合が高く,人口が少ないので,たくさん市町村が合併した県と考えられるので,答えはイ。
②について
Pの割合はABCDの順に多く,ABはCDと比べて人口が少ないので過疎化している。だからABは都会ではなく高齢者が多いので,Pは人口に占める65歳以上の割合で答えはウ。第三次産業の割合が高いのは人口の多い都会であることが多い。
3(2)
次の文章は,Ⅲの資料について述べたものである。Ⅲの資料中のZにあてはまるアイコンと, 文章中の(③)にあてはまることばの組み合わせとして最も適当なものを、下の表のアからエまでの中から,また,文章中の(④)にあてはまる符号として最も適当なものをⅡの資料中のAからDまでの中からそれぞれ選びなさい。
鳥取県は,Ⅲの資料のような取組により,持続可能な地域社会の実現を目指しており,資料中の指標の一つを向上させるための具体的な手立てとして,(③)を推進するなどしている。なお,鳥取県は,Ⅱの資料中の(④)にあたる。 |
ア | イ | ウ | エ | ||
組み合わせ | Z(アイコン) | ||||
③ | エコツーリズム | 工場の海外移転 | エコツーリズム | 工場の海外移転 |
解説
③について
資料Ⅲの指標として製造品出荷額等,就職者決定数,有給休暇取得等,観光入込客数があるので,ゴール8の「安全に安心して仕事ができる環境を進める。」「地方の文化や産品を広め、働く場所をつくりだす持続可能な観光業」に当てはまるのでアかイ。また,ゴール8は持続可能な観光業を目指すので,エコツーリズムを選んで,答えはア。
④について
人口だけでA~Dまで決められる。最も多いDが神奈川県,次に多いCが千葉県,次に多いAが秋田県,残るBが鳥取県。なお,この4県では米の生産量が最も多いのが秋田県で,海面養殖は千葉県が多い。よって答えはB。
3(3)
次の文章は,Ⅳの資料について述べたものである。文章中の(⑤)にあてはまる符号として最も適当なものを,Ⅱの資料中のAからDまでの中から,また,文章中の(⑥),(⑦)にあてはまることばの組み合わせとして最も適当なものを,下のアからカまでの中からそれぞれ選びなさい。
Ⅳの資料は,Ⅱの資料中の4県のうち,(⑤)にある市のハザードマップの一部である。この市は県庁所在地の東方に位置し,太平洋に面している。Ⅳの資料中の塗りつぶされた部分は,津波による浸水想定地域を示しており,aの地点では(⑥)が,bの地点では(⑦)が市の指定避難場所となっている。 |
ア ⑥津波避難タワー
⑦想定される津波の高さより標高が高い高台
イ ⑥津波避難タワー
⑦海岸までの最短距離が1km以上の施設
ウ ⑥想定される津波の高さより標高が高い高台
⑦津波避難タワー
エ ⑥想定される津波の高さより標高が高い高台
⑦海岸までの最短距離が1km以上の施設
オ ⑥海岸までの最短距離が1km以上の施設
⑦津波避難タワー
カ ⑥海岸までの最短距離が1km以上の施設
⑦想定される津波の高さより標高が高い高台
解説
⑤について
この市は太平洋に面しているとあるので,千葉県か神奈川県。神奈川県の県庁所在地の横浜市は県の東方に位置し,その東方は東京湾だから,この市が県庁所在地の東方にあることがありえなくなる。よってこの市は千葉県にある市になるので答えはC。
⑥⑦について
aは標高も高くなく,目分量で海岸線から500mも離れていないので,避難場所であるとしたら高い建物で,津波避難タワーを選択して,答えはアかイ。bは地区の三角点が標高68.1m示しているし,西側に等高線がたくさんあるので高台であるから,想定される津波の高さより標高が高い高台を選択し,答えはア。
大問4
次のⅠ,Ⅱ,Ⅲの資料は,生徒がアジア, アフリカ,北アメリカ,ヨーロッパの4州の水資源の 利用状況等についてまとめたものの一部である。あとの(1)から(4)までの問いに答えなさい。
なお,Ⅰの資料中のA,B,Cはアジア,アフリカ,北アメリカのいずれかであり,Ⅲの資料中のD,E,Fは米,大豆,バターのいずれかである。また,Ⅰ,Ⅱの資料中のX,Yには,それぞれ同じことばがあてはまり,生活用水,農業用水のいずれかである。
Ⅰ
州名 | 世界6州に占める割合(%) | 州内における分野別水使用量の割合(%) | |||
面積 | 人口 | X | 工業用水 | Y | |
ヨーロッパ | 17 | 10 | 30 | 47 | 23 |
A | 17 | 8 | 44 | 42 | 14 |
B | 22 | 16 | 79 | 7 | 14 |
C | 24 | 60 | 82 | 9 | 9 |
(注)「生活用水」は家庭用水(飲料水,調理,洗濯,風呂,掃除,水洗トイレ等)と都市活動用水(飲食店等の営業用水や公衆トイレ等に用いる公共用水, 消火用水等)の合計を示している。
Ⅲ
農産物名 | 生産に必要な水の量(㎥/t) | 日本における自給率(%) | 日本に輸入量全体に占める割合(%) | |||
アジア | アフリカ | 北アメリカ | ヨーロッパ | |||
D | 3,700 | 97 | 53 | 0 | 47 | 0 |
E | 2,500 | 6 | 1 | 0 | 85 | 0 |
F | 13,200 | 95 | 0 | 0 | 2 | 37 |
(注)「生産に必要な水の量」は「バーチャルウォーター」とよばれ,輸入国が,その輸入産品を自国で1t生産したと仮定した場合に推定される水の必要量(㎥)を示している。
(「日本国勢図会 2022/23年版」などをもとに作成)
4(1)
Ⅰの資料中のA,Bの州名の組み合わせとして最も適当なものを、次のアからカまでの中から選びなさい。
ア Aアジア Bアフリカ
イ Aアジア B北アメリカ
ウ Aアフリカ Bアジア
エ Aアフリカ B北アメリカ
オ A北アメリカ Bアジア
カ A北アメリカ Bアフリカ
解説
人口割合の大きいCが人口の多い中国・インドなどをもつアジア。面積は北アメリカよりもアフリカのほうが大きいので,Aが北アメリカ,Bがアフリカで,答えはカ。なお人口もアフリカのほうが多い。
4(2)
次の文章は,生徒がⅡの資料を用いて作成したレポートの一部である。文章中の( )にあてはまることばとして最も適当なものを,下のアからエまでの中から選びなさい。
アフリカとヨーロッパの2州を比較すると、アフリカの方が一人あたりの( )からヨーロッパに比べて衛生施設が整備されていない国が多いと考えられる。 |
ア 生活用水の使用量が多い
イ 生活用水の使用量が少ない
ウ 農業用水の使用量が多い
エ 農業用水の使用量が少ない
解説
アフリカには,ヨーロッパにあるような工業国はほとんどないので,「農業用水が多い」または「生活用水の使用量が少ない」のどちらかになる。文章中の「衛生施設が整備されていない」ということは,飲み水などの上水道や生活排水などの下水道が完備されていない,つまり生活用水が整っていないということで,「生活用水の使用量が少ない」を選択する。答えはイ。
4(3)
次の文章は,生徒がⅢの資料について発表するために作成したメモの一部である。文章中の (①),(②)にあてはまることばの組み合わせとして最も適当なものを,下のアからエまでの中から選びなさい。
畜産物の生産には家畜の飼料として農作物が必要である。農作物の栽培にも水が必要なことから,Ⅲの資料中の農産物ではバターの生産に必要な水の量が最も(①)なっていると考えられる。また,北アメリカで干ばつや地下水の枯渇など,水資源に関する問題が生じた場合,(②)の方が日本での供給に影響が出る可能性が高いと考えられる。 |
ア ①多く ②米よりも大豆
イ ①多く ②大豆よりも米
ウ ①少なく ②米よりも大豆
エ ①少なく ②大豆よりも米
解説
資料Ⅲ中のEは,北アメリカからの輸入割合が多いので大豆。Fは酪農が盛んなヨーロッパの割合が多いのでバター。残るDが米。
畜産物の生育には,家畜のための水と餌となる農作物のための水が必要となるので,米や大豆などの農作物より水の使用量は多くなる。次に,日本は米の自給率が高いので,北アメリカで干ばつなどが起きても影響は少ない。また,大豆の輸入量はアメリカからが多く,アメリカで生産量が減れば影響が大きい。よって①多く②米よりも大豆となり答えはア。
4(4)
次のアからエまでは,4州それぞれの水に関連する風景の写真と,その写真についての説明文である。アからエまでに示された風景が位置する場所を日本との時差の小さい順に並べたとき,2番目になるものを選びなさい。
ア | イ | ウ | エ |
ガンジス川流域の町 | アルハンブラ宮殿 | グランドキャニオン | ビクトリア湖 |
ヒマラヤ山脈を源流とする大河のほとりに位置するヒンドゥ一教の聖地で,多くの信者が巡礼で訪れる。 | 本初子午線の西側, イベリア半島に位置する宮殿で,宮殿内には大量の水が引き込まれている。 | 大陸の西部に位置する峡谷ぐ,ロッキ-山脈を源流とするコロラド川の侵食作用により形成された。 | 大陸の東部,赤道直下に位置する世界3位の面積をもつ湖でナイル川の水源となっている。 |
解説
アはガンジス川とあるから南アジアのインド。イはイベリア半島とあるからヨーロッパのイタリア。ウはロッキー山脈とあるからアメリカ。エはナイル川とあるからエジプトと言いたいけれど,ビクトリア湖は,ケニア,ウガンダ,タンザニアにまたがっている。日本と時差が1番小さいのは東経にあって日本に一番近いインドでア。1番大きいのは唯一西経にあるアメリカでエ。あとはケニアもイタリアも東経にあるけれど,ケニアのほうが東経の角度が大きいので日本との時差が小さくなる。よって2番目に小さいのがエのビクトリア湖。3番目に小さいのがイのイタリア。小さい順に並べかえると,ア→エ→イ→ウ。よって2番目に小さいのはエが答え。
大問5
社会資本の整備に関するⅠからⅢまでの資料をみて,あとの(1)から(6)までの問いに答えなさい。
Ⅰ 生徒が地域の高速道路建設についてまとめたレポートの一部
徳島県と香川県を結ぶ高速道路の建設に際し,切り崩す予定であった丘陵で鳴門板野古墳群が発見された。古墳群の中の前方後円墳は,この地域に(①)時期につくられたものと考えられる。高速道路は右の地図のように建設され,当初の予定よりも工事期間は延びたが,公正と効率の観点からみると,〔 ② 〕に配慮したものとなった。また,鳴門ICから徳島・香川県境までの区間では,高速道路の建設に伴って496人の住民が用地の提供に応じ,180戸が移転することとなった。 | (国土地理院 地理院地図により作成) |
5(1)
Ⅰの資料中の(①),〔 ② 〕にあてはまることばとして最も適当なものを,次のアからクまでの中からそれぞれ選びなさい。
ア 多賀城がおかれた イ 国風文化の影響が及んだ
ウ 大宰府がおかれた エ 大和政権の影響が及んだ
オ 古墳群の下にトンネルを建設し,文化財を保存することで公正の観点
カ 古墳群の下にトンネルを建設し道路木体の建設費を抑えることで.効率の観点
キ 鳴門ICを古墳群の西側に設置し,文化財を保存することで公正の観点
ク 鳴門ICを古墳群の西側に設置し,道路本体の建設費を抑えることで効率の観点
解説
①について
「古墳群の中の前方後円墳」とあるので,古墳時代について答えればよい。
ア多賀城は蝦夷を攻めるために724年にできた。奈良時代だから×。
イ国風文化は平安時代の文化だから×
エ大和政権は古墳時代だから〇
答えはエ。
②について
鳴門板野古墳群のところにトンネルがあるのでオかカ。次に,はじめは山を切り崩す予定だったのにもかかわらずトンネルを掘ったのだから,トンネルのほうが安くなるとは考えにくい。切り崩すことによって古墳群がなくなってしまうのを防いだと考えるほうが自然だから,「文化財を保存することで」を選んで答えはオ。
5(2)
Ⅰの資料のような, 高速道路の建設に伴って文化財が発見されるというケースに際して,15歳の生徒がとる行動として法律の上で認められていないものを,次のアからオまでの中から全て選 びなさい。
ア文化財の価値を知ってもらうためにボランティアガイドをつとめる。
イ文化財の保存を求める請願書を市議会に提出する。
ウ文化財調査後の高速道路早期完成を訴える署名活動に参加する。
エ市議会議員選挙で文化財調査後の高速道路早期完成を公約とする候補者に投票する。
オ文化財の保存を公約として市議会議員選挙に立候補する。
解説
18歳未満は,有権者(選挙権を有する者)ではないので,選挙には立候補できないのでエとオ。ボランティア,請願書の提出,署名活動は認められている。なお,直接請求権(例えば条例の制定など)の署名については認められていない。また,署名を集める請求代表者も有権者でなければならない。答えはエとオ。
5(3)
次の文章は,Ⅰの資料に関連して述べたものである。文章中の(③)から(⑤)までにあてはまることばとして最も適当なものを,下のアからキまでの中からそれぞれ選びなさい。なお,文章中の2か所の(③)には同じことばがあてはまる。
日本国憲法の第12条により,国民の自由や権利は「濫用してはならないのであって,常に(③)のためにこれを利用する責任を負う」とされている。Ⅰの資料では,(④)が(③)にあたり,住民の居住の自由や財産権が制限され,移転が実施されたと考えられる。憲法に規定される自由権は人権保障の中心であるが,第22条や第29条が保障する(⑤)は,より快適な社会を実現するという観点から制限されることがある。 |
ア 公共の福祉 イ 法の下の平等
ウ 鳴門板野古墳群の調査
エ 高速道路の建設 キ精神の自由
オ 身体の自由 カ経済活動の自由
解説
③について
第12条は「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」とあるので,答えはア。
④について
「住民の居住の自由や財産権が制限され」たのは,高速道路ができたからだから,答えはエ。
⑤について
文章は,居住移転の自由や財産権について書かれている。この2つは経済活動の自由だから答えはカ。
Ⅱ 生徒が社会資本の整備に関する今後の課題についてまとめたレポートの一部
表1 建設50年以上経過する道路施設の割合(%) | |||
2020年3月 | 2030年3月 | 2040年3月 | |
橋 | 30 | 55 | 75 |
トンネル | 22 | 36 | 53 |
(国土交通省「インフラ長寿命化計画」 (令和3年) をもとに作成) |
図1「予防保全」への転換 |
道路などの社会資本について,今後の維持管理・更新を「事後保全」により行った場合, 30年後,その費用は約2.4倍増加。「予防保全」に転換した場合,約1.3倍増加。 (注)〇更新 = 施設を作り直すこと○事後保全=施設に不具合が生じてから補修などの対策を講じること。○予防保全=施設に不具合が生じる前に補修などの対策を講じること。 |
表2道路の維持, 補修の考え方 選択肢
選択肢 | % |
補修するよりも積極的に作り直す | 21.1 |
傷みが大きくなったら補修し,必要に応じて作り直す | 5.3 |
傷みが小さいうちに予防的に補修し,長持ちさせる | 41.1 |
施設の集約や撤去を進める | 25.0 |
その他・無回答 | 7.5 |
表3力を入れてほしい道路分野 (複数回答)
順位 | 選択肢 | % |
1 | 災害に備えた対策 | 64.0 |
2 | 狭い道路や急カーブの改良 | 51.3 |
3 | 歩道の整備 | 39.1 |
… | … | … |
9 | 清掃や修繕などの維持管理の充実 | 28.0 |
… | … | … |
17 | 特になし・その他・無回答 | 4.4 |
(表2,3とも内閣府「令和3年度 道路に関する世論調査」 をもとに作成)
表1をみると,現在15歳の私たちが30歳を超えるころには,道路施設の老朽化が進むことがわかる。また,そのころには,現在よりも〔 ⑥ 〕ことが予測されていることから国は図1の見出しのような方針を示している。世論調査の結果, この方針に示された考え方は,表2で〔 ⑦ 〕に力を入れてほしいと思っている人が多いことがわかる。 |
5(4)
Ⅱの資料中の〔 ⑥ 〕,〔 ⑦ 〕にあてはまることばとして最も適当なものを,次のアからキまでの中からそれぞれ選びなさい。
ア 電気自動車が増加し,住宅への充電設備の設置が進む
エ 最も多くの人に支持されていることがわかるが,表3では, 道路の維持管理よりもそれ以外
オ 最も多くの人に支持されていることがわかり,表3でも, 道路の災害対策よりも維持管理
力 7割以上の人に支持されていることがわかるが,表3では,道路の維持管理よりもそれ以外
キ 7割以上の人に支持されていることがわかり 表3でも,道路の災害対策よりも維持管理
解説
⑥について
図1は事後保全するよりも予防保全するほうが,費用がかからないことを示している。だから国は表1の見出し「予防保全への転換」という方針を示している。それは少子高齢化によって「税収が減る」と予想されるからである。よって答えはイ。
⑦について
表2で予防保全になっているのは,「傷みが小さいうちに予防的に補修し,長持ちさせる」であるが,これは41.1%と最も多いが,7割は超えていないので,答えはエかオ。表3の1位に「災害に備えた対策」,9位に「清掃や修繕などの維持管理の充実」とあるので,維持管理よりも災害対策などを希望している人が多いので,答えはエ。
5(5)
次の文章は,生徒が道路の維持管理について,下の図2をもとに作成したレポートの一部である。文章中の(⑧),(⑨)にあてはまることばの組み合わせとして最も適当なものを, あとのアからエまでの中から選びなさい。
なお,文章中の2か所の(⑧)には同じことばがあてはまる。
『岡山道路パトロール隊』は,道路の維持管理という社会課題について,工業高校生が学校での学びを生かして(⑧)するものである。下の図中の「(⑨)」は,多くの場合,行政機関が担うが,道路の維持管理をはじめ,全ての社会課題を行政機関だけで解決することは難しい。これからの社会を支えるためには,私たちも,社会の一員であることを自覚して,積極的に(⑧)することが大切である。 |
図2
高校生によるパトロールの様子 | |
産官学合同パトロールの様子 | |
インフラ調査士補語習会の様子 |
(注)管理瑕疵=本来行うべき管理が十分にできていないこと。
(国土交通省「第5回インフラメンテナンス大賞(令和3年)」より抜粋)
ア ⑧社会に参画 ⑨保守・維持業者
イ ⑧社会に参画 ⑨道路管理者
ウ ⑧利潤を追求 ⑨保守・維持業者
エ ⑧利潤を追求 ⑨道路管理者
解説
⑧について
はじめの(⑧)よりも2つ目の(⑧)のほうが答えやすい。「私たちも,社会の一員であることを自覚して,積極的に」につながるので社会参画が入るので,答えはアかイ。
⑨について
「「(⑨)」は,多くの場合,行政機関が担う」とある。道路の管理は基本行政が行うので⑨には道路管理者が入るので,答えはイ。
Ⅲ 生徒が公共事業の意義についてまとめたレポートの一部
国や地方公共団体が道路などの社会資本を整備する事業のことを公共事業という。不景気のときには,国や地方公共団体は,(⑩)ことを目的として公共事業関係の予算額を増やし,景気の回復を図ろうとすることがある。世界恐慌の際に(⑪)の中にも,こうした試みがみられる。 |
5(6)
Ⅲの資料中の(⑩),(⑪)にあてはまることばの組み合わせとして最も適当なものを,次のアからエまでの中から選びなさい。
ア⑩各銀行の国債を買う ⑪アメリカのとったニューディール政策
ウ⑩企業の仕事を増やす ⑪アメリカのとったニューディール政策
エ⑩企業の仕事を増やす ⑪イギリスのとったブロック経済
解説
⑩について
「国や地方公共団体は」とある。各銀行の国債を買うのは日本銀行だから,アとイは誤り。
なお,公共事業が増えれば,企業の仕事も増えるので,答えはウかエ。
⑪について
ブロック経済は,本国と植民地以外の他国との関税を高くすることによって,本国と植民地間の貿易を活発にする政策だから,公共事業とは関係ないので誤り。ニューディール政策は,公共事業を増やしたり,労働者保護をしたりした政策だから,こちらが正解で答えはウ。